ピロリ菌とは
ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori)はらせん状の形状をもった細菌で、発見されたのは1983年です。1994年には胃がんとの密接な関係が明らかになり、ピロリ菌除菌が胃がん対策として有効であることがわかってきました。 胃の中には強い酸性の胃液があり、食物の消化と口から入ってきた細菌の殺菌という役割を担っています。ピロリ菌はウレアーゼという酵素からアンモニアを作り出すことで胃酸を中和して、胃の中という強酸の環境でも生息が可能になっています。
感染経路
成人の場合、ピロリ菌に感染してもほとんどの場合、一時的な胃炎を起こした後で免疫が働いてピロリ菌を排除します。ただし、5歳以下の場合、免疫が未熟であることから感染するとピロリ菌が胃粘膜へ持続的に生息して、成長しても排除されずに感染が続いてしまいます。 衛生状態が悪い環境では井戸水などを介した感染が疑われていますが、現在の日本では乳幼児期の口移しなどによる家族内での感染もあると考えられています。
ピロリ菌と胃がんの関係
ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌が出すアンモニアなどの毒素によって胃が慢性的な炎症を起こし続けます。やがてその胃炎が長い年月をかけて慢性萎縮性胃炎になります。この慢性萎縮性胃炎は、胃がんの前がん病変です。そして、ピロリ菌の除菌治療が成功すると、胃がんリスクを下げることができ、次世代へのピロリ菌感染を予防することにもつながります。 以前は早期胃がん、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の場合に、ピロリ菌検査や除菌治療が保険適用されていましたが、現在は内視鏡検査で慢性胃炎が確認されたら感染の有無を調べる検査や除菌治療が保険適用されるようになっています。
ピロリ菌との関連疾患
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
上記の疾患のリスクがありますので、ピロリ菌感染が認められたら、除菌することをお勧めいたします。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌の検査は内視鏡を使う方法と使わない方法があります。どの検査を行うかはその都度ご説明いたします。
内視鏡を使用する検査
- 迅速ウレアーゼ試験
- 鏡検法
- 培養法
内視鏡を使用しない検査
- 採血による抗体測定
- 検便による抗原測定
- 尿素呼気試験糞便中抗原測定
ピロリ菌の除菌治療
1日2回、7日間続けて薬を服用するだけで除菌治療が可能です。服用するのはピロリ菌を除菌する2種類の抗生物質に加え、除菌を効果的にするための胃酸分泌抑制のプロトンポンプ阻害薬を組み合わせて飲みます。除菌治療は100%成功するものではなく、日本における除菌治療の成功率は70~90%と報告されていますので、なるべく治療効果が上がるよう、薬の飲み忘れは厳禁です。最初の除菌治療で除菌できなかった場合、抗生物質を変えて2度目の除菌治療も可能です。再度の除菌治療を受けた場合、除菌成功率は90%以上になるとされています。 除菌が成功したかどうかを判定するためには、薬の服用が終了してから最低でも約1ヶ月以上経過してから判定検査を受ける必要があります。より正確な判定のために、数か月後に判定検査を行うこともあります。当院では半年後に検査をすることをお勧めしております。
保険適用について
2013年にピロリ菌検査・除菌治療の保険適用範囲が広がったため、条件をご確認ください。
- 内視鏡検査か造影検査で、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断を受けた
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 早期胃がんに対する内視鏡的治療後
- 内視鏡検査で胃炎の確定診断を受けた
内視鏡検査で胃炎の確定診断を受けたケースが追加項目です。内視鏡検査で胃炎と確定診断された場合、ピロリ菌感染の有無を調べる検査を保険適用で受けられます。また、その検査で感染していることがわかった場合には、除菌治療も保険適用で受けられます。 なお、保険適用の条件に当てはまらない場合も、自費診療になりますが検査や除菌治療が可能です。